出逢い

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それまで呆としていた頭から、一気に眠気が吹き飛んだ。 重かった瞼が、瞬時に限界まで上がり、驚きに目を見張りながらも、聖は急いで90度首を回した。 「う゛っ……」 信号機の支柱に針金で止められた立看板の文字が目に飛び込んだ。 死亡事故発生。日時は、昨夜午後22時過ぎ…。 げ―っ!!っと、心の中で力一杯叫ぶ。が、視てしまったものは、もう遅い。 朝メシ…。完食するんじゃなかった……。 後悔と共に沸き起こる胸焼けを、懸命にこらえる。 いくら視慣れているとはいえ、血まみれのスプラッターはホラー映画だけで十分だ。 しかも、食後すぐには視たくない。 そうこうしているうちに信号が変わり、聖は、これ以上不用意に視界に入れまいと、髪を掻き上げる風にしながら視界を遮り、小走りに横断歩道を渡って背を向けた。背中でその気配を探り、憑いて来ていない事を確かめてから、安堵の息をつく。 気のせいだろうか? 以前より、霊力が増しているような気がする…。 以前は、霊を視てもすぐにソレと判った。 何故なら、視える霊体は全体的に薄く半透明で、向こう側の風景が透けて視えていたからだ。それがここ最近、くっきり、はっきり鮮やかに、シャープに細部まで視える。 先刻のように─。 特に意識を集中しなくても、その気配を感じとってはいたが、連日連夜霊気にさらされて慣れてしまったのだろうか。 視てしまうまで気が付かない、という事も増えつつある。 どこにどんな姿の霊がいようと、自分が外に出て視てしまうのは仕方がない。 仕方がないが、あまりに鮮明に視えすぎて、時々、生身の人間と区別がつかないのだから、タチが悪い。 それもこれも、京都という場所に住んでいるのが悪いのだろうか?京都には昔から、陰陽師だ、鬼だ、悪霊だといった類いの話がある。 退魔、悪霊除けの為、社寺仏閣を都に結界を張る為の位置に配して建てられているとかいうが、それが却って、この土地に引き寄せる魔方陣のような役割を果たしてしまっている。なんて事はないと願いたいが、時々そんな風に疑ってしまいたくもなる。 それとも「聖」なんて書く名前がいけないのだろうか? とにかく、霊視ができて良いことなんて一つもない。 百害あって一利ナシだ。
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