出逢い

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出逢い

新緑の眩しい5月。 連休明けの朝、雲一つない水色 の空が京都の街の上に広がった。 繁華街として賑わう中心部から 西へ外れた閑静な住宅街はひっそ りと静まり、まだ朝のまどろみの 中にあるような趣きがある。 その中の一軒、漣(さざなみ)の 表札を門柱に掲げた家の二階から 目覚まし時計のリズミカルな電子 音が遠慮がちに鳴り出した。 前道に面した二階の部屋の中で ベッドの上にこんもりとした山を 形作っていた布団が、もぞもぞと 動き出す。 暫くして、布団の山からスロー モーな動きで腕が伸び、枕元の目 覚まし時計に到達すると、アラー ムのスイッチを切った。 頭まですっぽり布団の中に潜り 込んでいた小山の主は、わずかに できた布団の隙間から恨めしげに 時計の文字盤を睨めつけ、疲れた ような溜め息と共にガクリと顔を 伏せた。 「アキちゃーん!起きてねー! 二度寝はダメよー!」 階下から、高く澄んだ明るい母 の声が飛ぶ。 渋々の体で布団から這い出すも のの、まだ目が半分しか開かない 。奔放に跳ねた見事な寝癖頭を掻 きながら、大欠伸をすると共に、 溜め息をついて脱力する。 漣 聖(さざなみ あきら) 15歳。 公立高校に通う高校一年生。 特技:霊を視られる事。
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