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20分後。
白いシャツにネクタイの制服に着替え、左手にだらりと持ったブレザーと鞄を、半ば引きずるようにダイニングに現れた聖は、相変わらず目が半分しか開いていなかった。
奔放に跳ねていた髪は、一応、寝癖直しはしたものの、元々の癖毛で「少しはマシになったかな」という程度にしか収まらないのだが、無造作ヘアが流行ってくれたお陰で、それらしく見えるのが救いだ。
「…おはよ」
起きたばかりというにも関わらず、疲れきった声で、キッチンに立つ母の背に声を掛け、四人掛けのダイニングテーブルに歩み寄ると、椅子に座るなり、テーブルに「ゴン!」と額を打ち付けるように突っ伏した。
「おはよう。─昨夜も、あんまり眠れなかったみたいねぇ…」
朝食を作りながら返り見た母・美夜子は、ぐったりしている息子の姿に苦笑しながら、おっとりした口調で言う。
「…うん。一晩中、唸られた挙げ句、金縛り…」
聖は、テーブルに突っ伏したまま眠そうに言った。
聖には、人に見えないモノが視え、聞こえない筈の声が聴こえる。いわゆる「霊感」「霊能力」というやつだ。
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