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「やっぱり、妖気が強いですね・・・」
緊張したような声で志奈は呟いているがあいにく緊張しているのはこっちも同じなので和らげてやることはできそうにもない。
あれから撤退するかどうかを見極めるため屋敷へと侵入したのはいいのだがどうにもおびき出されているような気がしてならない。
少しずつ奥に進むにつれ妖気が濃くなっていくのだ。
万が一に備え手に札を持つ。
この札は俺が三日かけて作った水気を結界に変換するための札。
なかなかの完成度なのだがどうにも本当に空孤相手なら持つかどうかも怪しい心許ないものなのだがないよりは遥かにマシである。
建物が老朽化しているのだろう先程から一歩進むごとに床が軋んで心をかき乱すような音を奏でている。
「ここが一番奥の部屋みたいだな。」
「ええ、とても強大な妖力を感じます。」
さて、引くべきか引かざるべきか、気分はさながらハムレットの”to be or not to be that is the question”だ。
俺が本気で撤退するか悩んでいると部屋のドアがひとりでに開く。
そして中から現れたのは金色のそれは綺麗な尾のない狐だった・・・
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