初陣

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――ワシントンD.C上空。 <――到着予定時間まで、後2分。出撃準備願います> 機内に流れる無機質な声。 その声に合わせてざわざわと慌ただしくなる乗組員達。 だが一人だけ、そんな慌ただしさなど関係ないとと言いたげに、座ったまま煙草を一本、味わい深く吸っている男がいた。 男が吸っている煙草は、先端が燃えているのではなく赤く光っているだけの電子煙草だ。今の時代、この電子煙草の方が普及している。 数十年前に開発されたこの電子煙草は、開発当初、禁煙目的として作られたらしいが、今では周りに影響を及ぼす副流煙を出さない他、体への害も全くなく、味も普通の煙草となんら変わらないことから、普通の煙草よりも圧倒的に人気がある。 何より、一回吸っては捨てなければならない普通の煙草に比べ、一度買えば何度でも使える為お金もかからないというのも人気の一つだろう。 まぁそれでも普通の煙草の方がいいと言う者も中にはいるらしいが、この男、ヒューリー・ロバートソンはそこまでの物好きではなかった。 「――まさか、初めての実戦でこんなところに来ることになるとはな」 そんな電子煙草を吸うヒューリーの姿は、正に異質であった。 頭以外の全身を、黒く塗装された金属製のアーマーに身を包んでいる。 映画やゲームなどでよく見るバトルスーツのような姿だ。 唯一違う点があるとすれば、それは従来のバトルスーツに比べ、ずっと金属質を感じさせないような、美しいフォルムだと言うことだ。 言うなれば、無駄をなくしたバトルスーツ。より人間の体の形に沿って洗練された外装甲。全身の装甲にはスーツと対照的な白いラインが描かれており、スーツの色からよりラインが目立って見え、ラインの白と、装甲の黒が相まって、美しい。 ラインは胸元の一点に集まっており、時折、光りながら脈動する様から、まるで胸元から全身にエネルギーを伝えているパイプのようにも見える。胸元を心臓と言うのならば、このラインが人間で言う血管の役割をはたしているのだろうか。 腰にはラインの色と同じ、銃身全てが白い金属で加工されている大きな銃がニ丁つけられており、右肩には『MFSA』と装飾が施されている。
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