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あたしはいつものように図書館へと足を運ぶ。
「今日もガラッガラね~。」
扉を開けると図書館の古びた独特な匂いが込み上げてくる。
「……おいお前。」
入るとほぼ同時にあたしは声をかけられた。
「……お前。」
あたしを『お前』呼ばわりしてくれやがった男が仁王立ちしてる。
金髪にピアス、ズボンは腰パンで背が高く目は鋭い。
不良とギャル男を足して二で割った感じである。
図書館には不釣り合いな風体だわ。
「そう、アンタだ。」
仁王立ちしていた男はあたしをズバッと指差す。
「何ですか?」
少しムッとしたあたしは彼を睨んだ。
「『何ですか?』じゃない。
アンタの足元。」
くいくいっと彼はあたしの足元を指差す。
「……へ?
あしも……ひゃあっ!」
思いっきり眼鏡を踏ん付けていたあたしは、男に指摘され慌てて足をどかした。
「それ、俺様の眼鏡。
取り合えず拾ってくれないか?」
眉間にしわを寄せ彼は言う。
……明らかに困ってる。
「ご、ご、ごめんなさい!」
あたしは慌てて足をどかし、男へ眼鏡を差し出した。
「いや、うん。
壊れてなさそうだし大丈夫だ。
それに遠視用だから普段は使わないし。」
受け取った眼鏡をジロジロと確認し男は言う。
「よかったぁ。」
とりあえず、男の眼鏡が無事でホッと胸を撫で下ろす。
「アンタ、花菱 千夏だろ?」
男はあたしをなめ回すように上から下まで見て言った。
「へ?」
何でこの人、あたしを知ってるのかしら。
「ふんっ。
ふった男の顔は忘れたのか?」
腕組みをし、男はあたしを見下したように見る。
この人は……。
いや、コイツは!
「あっ!
三井 蓮(みつい れん)。」
あたしの元カレ。
コイツ、見た目が変わってて気付くの遅くなった。
真面目な爽やかボーイがまさかこんな金髪チャラ男になるなんて……。
「声でかいし。
ここ図書館だぜ。」
あたしがコイツを思い出した事で心なしか、コイツの表情が緩んだ気がする。
……多分、気のせいだと思うんだけど。
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