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「……知ってたのか?」
蓮は突然の事にきょとんとしている。
あたし、蓮の事見てたから知ってるよ……。
「当たり前よ。
あたしは蓮を見ていたんだから。
蓮は何ともないふりしてたけど、ホントは辛かったんでしょ?
だから今だってそんな格好してるんでしょ?」
ごめんね、蓮……。
ぎゅっ……。
ボロボロ涙を流すあたしを蓮は優しく抱きしめた。
「小さくて守ってやりたい存在だと思ってた。
だけど、俺の方が千夏に守られてた。
沢山辛い思いさせてごめんな。」
あたしは蓮の目を見た。
蓮もあたしと同じように目に涙がたまってる。
同じ気持ちなんだね、蓮……。
「謝ってばっかり……。」
……謝らなきゃいけないのはあたしの方だよ。
「ごめん……。」
また謝ったし……。
「あたしもう逃げないよ。
だから蓮も飾らない蓮でいてよ。」
あたしは涙をゴシゴシふいてにっこり笑った。
あたし、決めた。
もう、自分だけが被害者だと思わない。
もう、自分だけ逃げない。
「あぁ。
俺も逃げないよ。」
蓮もあたしの顔を見てにっこりと笑った。
あれ?
蓮がこんな顔で笑ったの久々に見た。
嬉しいなぁ……。
「蓮、あたしともう一度付き合ってほしい。」
願いが叶うならもう一度……もう一度蓮と付き合いたい。
「千夏、ずるいよ。
俺から言おうと思ってたのに。」
蓮はすねたような顔をする。
付き合っていた頃の蓮は喜怒哀楽をよく顔に現す子だった。
あたしもそうだった。
あの頃は二人とも素直だったんだね。
「今度は二人で何でも立ち向かっていこうね。」
今度はあたし、逃げないから。
蓮を一人ぼっちにしないから。
「あぁ。
俺もそばにいる。
約束するよ。」
そう言うと蓮はあたしの手をギュッと握った。
その手は少し震えていて汗ばんでいた。
あたしは蓮に答えるように手をギュッと握り返した。
「うん。
約束だよ。」
あたし達は再度ギュッと抱き合った……。
さっきよりも強く強く……。
過去をリセットするかのように……。
今度は二人で幸せになろうね。
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