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9月1日。長かった夏休みもとうとう終わってしまった。
外は相変わらず蒸し暑く、そして空は昨夜の大雨とは打って変わって雲一つない晴天。まるで今日から新学期の学生達を暖かく、むしろ暑苦しく迎えてくれるかのようだった。
とあるマンションの一室の前で、俺、霧島雄介(キリシマユウスケ)は反省していた。
ちょうど5日前、俺は生まれて初めて恋人ができ、その日こっそり思っていた。
どうにか4日で溜まっている宿題を終わらせて夏休み最後の日はデートをするんだと。
俺は必死だった。栄養剤を飲みまくって必死に頭を回転させた。1日1時間の睡眠で頑張った。手が痙攣してしまうくらい必死にペンを動かした!そして!
……………………終わらなかった。
結局、今朝までかかってしまってデートはできなかった。
情けない。俺って奴は本当にクズでノロマで矮小な人間だ。
ははっ、笑いたければ笑うがいい。昨日彼女にも電話越しに言われたんだ『どうしようもないくらいバカね』って。
その時はかなり泣きたくなったよ。
しかも『写させてくださいお願いします美と知性の女神唯さま』ともの凄く下から頼んだのに『嫌』と一言だけ残してすぐ切りやがった。
何か怒ってたぽかったけど、やっぱりデートしたかったのかな?
……ああ、それにしても眠い。
(さて……)
重い瞼を擦りつつ、俺はインターフォンに手を伸ばす。
目の前にあるこの部屋、実はその彼女の家だったりする。
これは恋人になったその日に『いい?これから学校は毎日一緒に登校する事。絶対だから。一度でも破ったら……許さないんだから』と約束させられたからここにいる。
それにしても気恥かしそうに頬を朱に染めたあの時の顔は本当に可愛かったなぁ、なんて思いながら俺はインターフォンを押す。
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