人間、苦い思い出の1つや2つあるんです!

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「ところでさ。キミ、相当めかし込んでるけど、もしかしてこれから出かけるところだった?」 ジリジリと金髪がにじり寄ってくる。 怖い。誰か、助けて…… 「だったらオジサンと出かけない? 直に相方も来るはずだし、他のコも連れて一緒にさ。サービスするよ。オジサン、女の子には超優しいから色々と買ってあげちゃう」 雄介──! 「どこか行きたい場所とかある? ないならオジサンがお勧めするお店に行──」 「唯ちんに触れんなアアアアアアアアアアアアッッ!!」 怒声にも似た声がした直後、鈍い衝撃音が聞こえた。 途端に金髪の姿がぶれ、右側の壁に突っ込む。とても嫌な音をさせてぶつかるとうつ伏せに倒れて動かなくなる。 極度に高まっていた緊張が解け、一緒に力も抜けて私は床にへたり込む。 「杏奈……汐音会長……」 前のめりに倒れかけた私の体を、駆け寄ってきてくれた2人が素早く支えてくれた。 「唯ちん大丈夫!?」 「どこか怪我したんですか!?」 「ううん平気。ちょっとふらついただけだから」 心配してくれる2人に肩を借りて立ち上がると、その場から離れ、階段に腰を下ろす。 「……ありがと杏奈。助かった」 「いいよお礼なんて。私の方こそ出てくるのが遅れてごめん」 申し訳なさそうな顔で謝ると、杏奈はきっと睨みつけるような目で男を見る。 「でさ唯ちん。あの人……誰?」 「知らない。たぶん雄介か風華ちゃんの知り合いだと思うけど……」 「良い知り合い、というわけではなさそうですね」 そこで言葉を切った汐音会長は、玄関のとある一点を見つめた。その表情は苦虫を噛み潰したようだった。 きっともう気づいているんだろう。 まだ気づいてなかったらしい杏奈の瞳が会長の視線の先を追う。
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