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「お姉ちゃんも、いつまでもそんな軽装でいないで早く着替えたら?一応有名モデルなんだし、それなりの格好をしてよ」
「んもー!マネージャーみたいな事言わないの。仕事じゃないんだから家くらい好きな格好でいてもいいじゃない」
「世間体を考えてって言ってるの」
ボソボソと姉の世話を焼きながら、ようやく我が恋人、桜井唯(サクライユイ)が出てきた。
神社で告白して以来、5日ぶりの再会だった。
俺の想像では照れながらの嬉し恥ずかしな挨拶を交わすのはずだったのだが、思っていたより唯は普通………というか、若干不機嫌そうだった。
寝不足か?もしかして一緒に登校するのが嬉しくてあまり眠れなかったとか!?
「おはよ唯」
俺は親指を立てて爽やか挨拶する。
「さっ、学校に行くか。早く行かないと遅刻するぞ☆」
ガラにもなくウィンクしてみる。いつもの俺なら絶対しないことも5日完徹で変なテンションおかげで平然と出来てしまう。
今から始まるリア充ライフ。
ウキウキワクワクしながらさっと手を出す。
唯は出された手を見て、目線を上げて今度は俺の顔を見て一言。
「……どちら様ですか」
…………………………………あれ、他人行儀?
「じゃあ行ってきます。昼過ぎには帰るから」
「あ、あの唯。何かおかしくない?どちらさまって?俺の事分からなくなったのかなぁ?」
「あっ、そうだった」
「そ、そうだよな分からなくなるはずがないよな。良かった、ほっ。さあ一緒に学校へ──」
「今日は燃えるごみの日だった。持っていかないと」
「うぉい待てぃ!!」
耐えきれなかった。
また家の中へ戻ろうとする唯に俺は全力で叫ぶ。
「ゴミより大事な人がいるだろ!はい質問!あなたのすぐ傍には誰がいます───なぁ、1回くらい目ぇ合わせない?頼みますよ。お願いだからこっちを向いてぇえええええ!!」
俺の懇願は虚しく風に消え、唯の姿は家の奥に消えてしまった。
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