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荷物を引きずってオープンカーに向かって駆ける。視界の端で浩二がショックを受けたような顔をしていたが、まあ気にしなくていいだろう。
2人とはおよそ2年ぶりの再会だった。
萩岳人。俺と同じで将来について悩んでいたしっかり者の彼は高校を卒業後、有名国立大学に進学。そこで法学部法律学科を専攻し、弁護士となった。事務所に入ってからまだ雑用のような事ばかりしているらしい。
しかし風の噂によると近々民事裁判をひとつ任されるのだとか。たぶん大変だろうけれど、奥さんと子供のためにも頑張ってもらいたい。
上野浩二。高校を卒業した後、地元の短期大学に進学して児童学科を専攻。大学を卒業した後は夢だと言っていた保育士になった。子供たちを相手に、楽しくも小忙しい毎日を送っているらしい。
ちなみに浩二は現在彼女募集中。希望する方は090-〇〇〇〇-△△△△までお電話を。
「2人とも久しぶり。ていうか、何でここにいるんだ?」
「唯さんからキミがまだ帰国していないと聞いて飛んできたんだ。きっと度重なる不幸に見舞われて空港から出られないんじゃないかと思ってね」
「まるで見ていたかのような洞察力! お前やっぱ弁護士より占い師の方が向いてるんじゃないか?」
「どうしてそうなる。洞察力と占いはまったく別物じゃないか」
言って岳人は腕を座席の後ろへ回し、バンバンと軽く2回叩く。
「とにかくお喋りは後回しだ。早く乗れ。急がないと本当に結婚式に間に合わなくなるぞ」
そうだ急がねば! 俺はすぐさま荷物と一緒に後部座席に乗り込んだ。
「よし乗ったな。上野いいぞ。出せ」
「………」
「おい上野。何をしているんだ」
早くしろ、と言って岳人がせかすが浩二はハンドルに額を付けたまま動かない。
痺れを切らした岳人が浩二の方を大きく揺すって、ようやく浩二は顔を上げる。
……何故か半ベソだった。
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