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車から放り出されないよう前の座席にしがみつきながら俺は叫ぶ。
「どうすんだよ! 後ろの警官、意地でも捕まえてやるって雰囲気で追ってきてる! とても振り切れそうにねぇ!」
「くっ。これは困った事になった。あのパトカーを撒けないと、式場の前を通っても停まれない。このままだと霧島ひとりを下ろすのも不可能そうだ」
「じゃ、じゃあずっとこうして逃げ回ってるのかよ!?」
「それもたぶん無理だ。僕が予想するに、後ろの警官は自分達だけでは僕らを捕まえられないと踏んで応援を要請しているはず。だとすればそろそろ来る頃だ。パトカー1台だけならいいが、それが3台、4台となったら逃げ切れる可能性はほぼないと言っていい!」
「だったらすぐに後ろのパトカーを振り切らないとって言った傍から応援部隊が来たアアアアアアアアアア!!」
今通り過ぎた交差点の左右から、けたたましくサイレンを鳴らすパトカーが走ってきた。
数は……5台! 岳人の予想よりも多い!
「やべぇ……。警察は本気で俺達を捕まえる気だ! このままじゃ包囲されて捕まっちまう!」
「ああそうだな。このままだと……"挟み撃ちだ"」
後ろに向けていた顔を前に戻す。前方に見えていた信号が、ちょうど黄色から赤に変わった。すると左右から何台もの乗用車が行き来し始める。
絶体絶命とはまさにこの事。俺は今まさにこの車に乗って初めて信号に引っかかろうとしていた!
「どうするよ……どうするんだよォォ!!」
前は信号の前で並んで停車する車の群れ。後ろは俺達を負ってくるパトカーの群れ。右も左も、入れそうな脇道はない!
退路がどこにもねェェ!! と心の中で叫んだと同時に、
「どうするって? 決まってんだろ!」
狂気一色の目をした浩二がニヤリと笑う。そして左手をハンドルから離し、サイドブレーキを掴むと俺と岳人に『何かに掴まってろ!』と大声で言う。
――それは一瞬だった。
「上野浩二新必殺技……ドリフトUタァァァァァン!!」
ギュギュギュギュギュ! と悲鳴を上げながら車体が右に転回する。
俺も横からくるGを受けて体が右に傾く。両目に映っていた景色は違うものに移り変わり、さっきまで後ろにいたパトカーが右斜め前方に見えていた。
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