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網膜にまで、こんなにも美しい世界を映す鏡にさえ、その"大木槌持ち"はやってきた。
始まりは揚々と。
それから先はふざけたリズムを刻みながら。
何度も何度も何度も何度も!
振り下ろされるそれが、到底耐えられるはずもない激痛を伝える。
堪らず僕は両手で目を覆った。
自ら世界を閉ざした。
だけどそんな程度の代価で済むほど、身体を蝕むウィルスの数は少なくない。
灼熱の鉄板を宛がわれたように、喉が焼け付く熱さとともに壊される。
「ガ……ァ……!」
今まで従えてきた骨肉の反乱。
まるで意志を持ったかの如く、僕を形作る骨が内部で暴れ、僕を僕と判断するための肉を突き破る。
それらはもう、痛い、なんて次元じゃなかった。
コンマの瞬間に何万と繰り返す絶望の連鎖。
痛覚が涙を呼び、衝撃が脳を揺らし、僕から生きる権利を奪っていく。
死にたくない。死にたくない。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!
神様は非情で。
そんな細やかすぎる願いさえ、叶えてはくれない。
見向きすらしてくれない。
だから僕は……この素敵な世界に──怨念を撒き散らしながら息することをやめた。
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