みなさん、さようなら

12/13
前へ
/15ページ
次へ
網膜にまで、こんなにも美しい世界を映す鏡にさえ、その"大木槌持ち"はやってきた。 始まりは揚々と。 それから先はふざけたリズムを刻みながら。 何度も何度も何度も何度も! 振り下ろされるそれが、到底耐えられるはずもない激痛を伝える。 堪らず僕は両手で目を覆った。 自ら世界を閉ざした。 だけどそんな程度の代価で済むほど、身体を蝕むウィルスの数は少なくない。 灼熱の鉄板を宛がわれたように、喉が焼け付く熱さとともに壊される。 「ガ……ァ……!」 今まで従えてきた骨肉の反乱。 まるで意志を持ったかの如く、僕を形作る骨が内部で暴れ、僕を僕と判断するための肉を突き破る。 それらはもう、痛い、なんて次元じゃなかった。 コンマの瞬間に何万と繰り返す絶望の連鎖。 痛覚が涙を呼び、衝撃が脳を揺らし、僕から生きる権利を奪っていく。 死にたくない。死にたくない。 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない! 神様は非情で。 そんな細やかすぎる願いさえ、叶えてはくれない。 見向きすらしてくれない。 だから僕は……この素敵な世界に──怨念を撒き散らしながら息することをやめた。 ── ────
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加