携帯小説 前編

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電話の向こうから、久しぶりだな小僧という声。 ただ返事をすると、奴は俺の気持ちと電話の理由を察したようだった。 「キングスタの倒産の事ひな」 「うん…あれ公なら何か知ってるかと思って」 「知らねえよ。オデにとっても寝耳にドクターペッパーだった」 水だろと言うと、炭酸を感じるほど驚いてんだひ、ってさ。 「ただ言えるのは、これが時代だ小僧。これがリアルなんだよ」 「何がだよ」 「儲かんなひから倒産したんだひ」 金。結局は金かよ。 「だって、今ニュースとかで取り上げられてんじゃんよ!電子書籍とか!携帯小説がドラマ化や映画化になったり!」 「一握りだひ!聞け小僧!書籍化した全てが一流か!?全て売れたか!?」 あれ公のかすれた低い声に熱がこもる。 「今の時代な、売れるもの作れる奴なら携帯小説じゃなくたって売れる!」 「けど、書籍化すれば!書籍化は俺の夢なんだよ!」  
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