第一章

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「……ハッ、悲鳴すら上げやしねぇ」 「………………ッ…」  蹴られた痛みに動かない体。踏まれて土色に染まる制服。蹴られて口端から血が出る。…でも、悲しくなんてない。 「おまえ、生きてるか?」  わからない。 「帰ろうぜー。もう時間の無駄だ」  取り巻きの女子達が倉庫から出ていくが 「テメーはダメな」  その声が聞こえた次の瞬間。無情にも閉まる扉。そして閂(かんぬき)の代わりに何かが取手部分に通された音がした。 「今日はコレが目的だったんだよねーッ!」 「キャハハハっ!マジおもろっ!」 「明日の朝まで頭冷やせばぁ?って感じ~」  遠くなる足音。気配が完全に消えたが、私の体は動かない。身体的にも心にも“痛み”はとてつもない物だった。 ―――私は、死んだ方がいいかもしれない。このまま死ねるなら、……………相応しい。  私は目を閉じた。もう何も考えたくない。そんな権限私にはない。皆の迷惑になる命なら、 …いらない。 ―――――♪♪  携帯の音だった。吹っ飛ばされた私のカバンの中に携帯が入っている。 「………消し………忘れた」  そう言えばさっき時間を確認しようとして携帯に電源を入れた。OFFにし忘れたのだった。私とした事が。 ――――♪♪  鳴り続ける電話。極限まで鳴っては切れ、また鳴っては極限まで鳴る。  親だろうか?いや、あのアバズレにこんなに長くコールする生真面目さはない。 ――――♪♪♪♪  仕方なく私は体を引きずらせながらカバンの側まで移動した。その間にも電話は鳴り続ける。 「……………」  誰だろうか。カバンの中に手を入れてストラップも何も施されていない携帯を開いた。 「………知らない…人?」  その番号には見覚えがない。 「…………はい」 「氷か!!今どこだ!!?」 ――――朱月…さん? 「なんで………私の番号…」 「先生から聞いた。妙な所でしっかりしてる氷の事だから先生には連絡先教えてるだろうってな」  見事な読みだった。 「…………で…」 「今、女子達が話してたんだ。――“これで少しはのっぺらぼうも懲りただろう”って。……何か、されなかったか心配になって…靴箱に外靴あるから中にいるんだろ?」  あ、動揺して取り替えるのを忘れていた。
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