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外から聞こえる朱月さんの声。なんだか息が荒れてる。……走ったからだろうか?
「木片挟んでいやがるッ…!おいっ!いんのか氷ッ!」
呼び掛ける声に私はなんて反応をしたら良かったのだろうか。この状況が状況なだけに声が出ない。そして
ガコッ
木片的な物が取り除かれる音がした。
「……―――ひょッ…!」
そこにあったのは泥だらけの制服を身に纏い汚い地面に横たわっていた私だろう。声が途切れた朱月さんは動く気配がない。開いた入り口で固まっていた。約十秒後、
「ひッ…氷…ッ!?」
私の側に駆け寄ってきた朱月さん。汚い服をまるで抱き締めるように私の腰と首に腕を回して上半身を持ち上げた。
「…おまえッ…!なんでこんなっ!!」
まぁ言いたい事はわからなくもない。虐めとか嫌がらせの類いも受けたことがないこんな奴に。
「関係………ない…」
突っぱねたい。体が動けば突き飛ばしている。だけど、予想以上に体は動いてくれなかった。あぁ情けない。
「関係大有りだっ!………なんで氷は皆を突っぱねんだよ………?」
「だから…関係な……っ…」
本当に今の自分が惨めで見て欲しくなかった。ひたすらに朱月さんの好意を受け取らないように突っぱねるつもりでいたが。
「………なにが…あったんだよ……こんなっ…」
今にも泣きそうな顔をしているコイツを、私は拒否しきれなかった。
なんで朱月さんは涙目になっているのだろうか?関係ないのに。悲しむ事なんて、ないのに。
「………消えてなくなりたい…」
「……………っ……」
私は呟いてしまった。嗚呼私はまた誰かを傷付けてしまった。私は生きてても誰かに笑顔を与える事なんて出来ない。
……私は、朱月さんの頬に手を伸ばした。温かい、頬だ。
「だから………私のために………傷付かないで……………―――――」
これが最後の記憶。目が閉じられる前に見た朱月さんの顔は、なんて切なくて悲しそうだったのだろうか。
ごめんなさい。私があの時コーンを投げて居場所を知らせなければ。
電話に出なければ。
――朱月さんと私が、出会わなければ。貴方はこんな顔にはならなかったでしょう?
――でも、…なんであなたが皆から好かれるか、わかったの。
軟派でチャラいけど、人の事をちゃんと考えられる人なのね。
―――次に目を開けたら、謝らないと。
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