第一章・二編(前編)

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「立場なんて関係ねーからっ」 「中途半端な事言わないで」 「何が中途半端だよっ」 「何から守る気よ」 「それはっ………虐めから」 「………………」  ダメだ。もう少し頭が柔らかくて回転が速い方だと思っていたが、一概にモテ男が全てそうだとは限らないと、私は学んだ。 「いーい?この学校にはアナタが好きな人が何人いると思ってんの?そんな人気者が私なんかと一緒にいたらどう思うの?…少しは考えなさい」 「………もしかして、妬いてる?」 「バカッ」  ダメだ。核心を言っても上手いこと回避されてしまう。……先を見ることが出来ないのだろうか?  私はお弁当を出してフタを開けた。 「ほぉー、今日は中華ですか」  隣から覗き込んでくる朱月さん。  今日は、メインディッシュはやはり麻婆豆腐。中辛にしてご飯には頼もしい相方。そして餃子とシューマイ。そして野菜を各散りばめる。 「バランスとか考えてたりする?」 「当然」  食べ物は摂取する形や量で体調が左右される物だ。ご飯を食べれば脳の回転が速くなり、野菜で栄養素を取り入れる。 「麻婆とか旨そうなんですけど」 「………一口」 「ヘヘッ、サンキュっ!」  昨日はこの会話でハンバーグを与えた。 「……ん、やっぱうめっ。料理とかやっぱ家でもすんの?」 「ん…、ウチの母は母としての機能を維持していませんので、私が全般を担ってる」 「機能って…、じゃあ父親は?」  来ると思っていた質問だ。 「…父は、表沙汰となった不倫に離婚して家を出ていきました。」 「………………」  うわやった、みたいな顔をした朱月さん。 「あー…まぁ色々あるよな、うん」  わかりやすい慰め方だった。 「……わかりやすっ」
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