追憶⇔記憶―氷―

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 私も皆にアプローチなんてしない。だから皆も私にアプローチはしない。もはや暗黙の了解と化していた。  友達と呼べる人もいない。家庭が家庭で親も気にする素振りもない。  私は、誰かに大事にされた事がなかった。  だから誰かを大事にする事もしらないし、どうやってその大事さを表現するのかわからない。  でも。 「あ、あの…水無月氷さん…ですか?」  話しかけてきたその子は、私なんかよりずっと可愛くて女の子らしくて……私とは真逆な人だった。 「……何か」 「あ、ううん!用とかじゃなくてぇ……いつも一人だから…」 「……だから?」 「ゔっ...そのっ………寂しく……なッ」 「例え私が寂しくても可哀想に見えてもアナタには関係のない様に思えますが」 「あッ…あー…………」  グゥの音も出ないほどに叩き潰してやった。今までの戒律を破ってはいけない。だから私はこうやって無邪気に話しかけてくる人を一刀両断しているのだ。  中途半端な言葉は相手の心に隙間を作る。だから隙間を作らせないように叩っ切る。  …本来ならば何も言えずに踵を翻し去ってしまうだろう。私のこのトゲトゲしたオーラを感じて去ってしまうだろう。  だが。 「あッ……あのっ!」  彼女はバカなのか?天然という属性なのか? 「とッ...“友達”…に、………なりたく…て…ぇ」 「………………」  半分泣き声になりながらも私の目を見ながらハッキリと言った。友達に?私と? 「……………何でですか」 「わッ…私ぃ……水無月さんみたいに物事とかキッパリ言えないし…何かをやり貫くとか根気みたいなのとか……ないしっ……私、水無月さんに憧れてるんです…っ!」  あぁ、私の耳がオーバーヒートしてるんだ、多分。 「………………」  いやーあり得ない。私がアンタを尊敬するならまだわかる。だけどっ………えー、なにこの状況。イジメ?どんな反応をしたら良いかがわからない。  ―――だけど。
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