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「な゙ッ―――!」
宙に舞う礼兎の身体。
礼兎は後ろから大丈夫か?と肩を掴んだがその直後、氷が手に持っていた重たいカバンが礼兎の顎に直撃したのだ
「れッ!礼兎!?」
ドサッと少し後ろに尻餅を付いた。
「いって…!」
「ウザイっ!近寄るなっ!」
頭に血が昇った私はそれだけを強い口調で言い放ってまた歩き出した。バカな男子達を置いて
「んだょ!やったの俺らだろーがッ!」
「礼兎関係ねーだろっ!」
後ろで吠える男子達。しかしそんな罵声を気にする程か細い神経は持ち合わせていなかった。
「大丈夫かっ…礼兎?」
「…ハ…ハハハハ…ッ」
「れ…礼兎?」
礼兎は驚きの顔をしながらも口元だけはなんだか綻んで笑ってしまった。
「…ハハっ……カバンに殴られて体が浮くとは思わなかったッ――水無月、氷――か」
礼兎は淡々と歩き歩んでいく水無月氷を、眺めていた。面白い奴。そう思っていた。
―――この時はまだ知らない。
明日にはお互いの心に感情の芽が芽生える事も。
―――“オイ、大丈夫か”
「……知らない…」
泣くほどツラい気持ちになる事も。
「―――なぁ」
尻をパンパンと叩きながら立ち上がる礼兎は笑顔のまま男子二人を呼び掛けた
「ど、どうした…?気にすんなよっ、あんな奴ッ」
「ちげーよ。アイツの笑った顔「―――見たくねぇ?」
あの仏頂面がさ、涙目になりながら腹抱えて笑ってんの。
俺は、見てみたいな。
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