第一章

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 レインコートの件は後々考えよう。とりあえず。 「……良い天気だ」  お弁当を食べる場所を考えなくては。教室論外。ラウンジ論外。というか人目に付く所は基本アウトだ。 「……………」  それは簡単。入学してから二日目の昨日、目の敵にしてる奴らが食事している私のお弁当を奪い、「犬のエサ食ってるー」とか爆笑した後に返してはもらえず、放課後の帰り道の土門さん宅(非学校関係者)の庭に飼われていた秋田犬ラッシー(氷命名)の犬小屋の前に置かれていた。その弁当箱の中身は洗ったのでは?と見間違えるほどに綺麗に平らげられていた。ある意味気持ち良い。  てなわけで、私は今屋上にいる。女子達はラウンジや校内のくつろぎ処でランチを楽しんでいると思われるのでわざわざ屋上にまで探しに来てまで私を虐めたりはしないだろう。寧ろそこまでしたならば喜んで殴られよう。 「…ん…。………味、濃いかな」  母の手料理に期待が出来ないのでお弁当は基本私が作っている。今日の献立を発表しよう。  ご飯は白米。私ゴマが好きなので白米にはゴマが必ず振りかけている。  次にオカズ。今日は塩分にこの身を任せたい気分だったのでウィンナーをフライパンで焼き、味付けは塩コショウ。  ハンバーグにとけるチーズを乗っけてフライパンで温めればアルミに包んである。ファミレスのココスにあるであろう「包み焼きハンバーグ」。あの原理を利用している。こうしておけばある程度お弁当を放置してもハンバーグの上に溶けているチーズがまた凝固を始める事を防げる。  野菜はゴボウ、ニンジン、大根、長芋を短いスティック状にしていて、ドレッシング和え。小さいブロッコリーを添えている。  これが私の今日の献立だ。少ない?私は少食なのだ。体重も気にしてはいない。 「…………ま、張り切っても意味ないしな」  誰にも見せるわけではない。  張り合う相手もいない。  頑張ったって仕方がないのだ。 「お、なにそのアルミ?」 「アルミではない。包み焼きハンバーグだ。チーズが固まるからなッ―――」  え? 「うわマジ!?手作りで包み焼きハンバーグって……やんのなー」  私はガッと首を後ろに向けた。いや心底ビックリした。心の中で献立を自分に発表していたが故に聞かれていても答えてしまった。 ―――この、朝私が吹っ飛ばした奴に。
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