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「イッテエェェェッ!」
陽光が完全に閉ざされた空間に、ジャコバンの声が響いた。
「オイコラクソガキ、ちっとは静かにしろやァ」
言いながらゼイヘンは、自らを取り巻く環境に気を配る。
光が射し込まないせいだろう、先まで感じていた夏の暑苦しさはどこへ行ってしまったのか。また、ゼイヘンにとっての世界では実に奇妙な現象が起こっている。
魔力の塊で自分達が閉じ込められているのだ。
「オイィジャコバン。どんな状況になってんだァこれはよォ」
「俺達を岩の箱に閉じ込めやがッたんですよォッ。あの赤髪のチビ野郎がァッ!」
地面に転がっていたジャコバンは勢いよく立ち上がり、フレッドルを指差す。
敵意と悪意の同居した口調、しかしフレッドルを不機嫌にさせたのは『チビ』のただ一言であった。
「んだテメェ、殴り飛ばされるだけじゃ気がすまねェのかよコラァッ!」
わかりやすいくらいに癪に障ったのだろう、フレッドルの言葉も一気に荒々しくなる。
「なるほどなァ」
そんな二人を差し置いて、ジャコバンは状況を頭の中で整理していた。
とにかく、ここがスラム街に突如として出現した、広大な密室のような場所であることは理解した。
「殴り飛ばすだけで済むならよォ、もともとこんなことしてないんだろォが?」
「はん、まぁそりゃそうだよなぁ」
依然として平然なゼイヘンの様子を見て、フレッドルは湧き上がっていた怒りをそっと心の奥に抑え込む。
いや、見たというのは間違いであろうか。声を聞いて、という方が正しいかもしれない。
布で両目が塞がっているゼイヘンはもちろん、フレッドルにもジャコバンにも周りの景色はわからないのだ。
まさに、ここは真っ暗闇だった。
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