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「今度はミスんじゃァーねェぞォ? フィヤン」
「うん、多分」
リン、フィヤン、ジャコバン、三人もの古き家族を前にしたメルトの眼は、強い光を宿していた。
そこでフレッドルは折れる。やる気になったメルトを思うように動かすことは、神や悪魔を意のままに操るに等しい。
つまりは難業なのだ。
しかし、ただ全てを諦めるような男は、フレッドル=ソニアその人ではない。
「ったく、わぁったよ」
次の瞬間にフレッドルは風のごとく走り抜けると、横並びになっていた三人のうち独りを腹部から殴り飛ばした。
「ぶふっ!?」
短く息を吐きながらゼイヘンの方へ宙を舞う彼を追うように、フレッドルは駆ける。
そうして離れたところで、脚は止めず、フレッドルは肩越しに振り返った。
「だが、もう一人だけ俺がやるからな」
不敵な笑みを浮かべた直後、空中を飛んでいる青年とゼイヘン、そしてフレッドル自身を閉じ込めるように四方の地面から岩の壁が顕現する。
彼らを取り囲んでいる壁の頂点から岩が伸び、フタを造りだす。
周りの家屋までも巻き込み一瞬にして形作られた岩の箱は、三人をまるで別空間に隔離してしまった。
「とっ、閉じ込められちゃったよ! どうしよう! 助けなきゃっ!」
「落ち着いて、フィヤンお兄ちゃん」
慌てふためくポッチャリ系男子とそれをなだめる小柄な少女の姿は、ダメな兄とできた妹のそれだ。
「大丈夫だよ、ゼイヘンお兄ちゃんがいるから」
「あっ、それもそうだねー」
リンの一言で安心したのか、フィヤンは彼らしい口調に戻る。
「そんなことより、あの赤い人はわたしが殺したかったけど」
片や妹の方は、岩の箱にあからさまな殺意を向けていた。
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