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「だけど、リン。これはチャンスだよー」
「そうだね」
リンが視線をメルト達に戻す。
「ジャコバンがいたら、問答無用で全力してたと思うしー」
「ゼイヘンお兄ちゃんも……手加減なんてしないと思う」
「やっぱり、リンも僕と同じように思ってるみたいだね」
「うん」
肌にまとわりつくような二つの視線は、メルトに緊張感をもたらす。
殺意とはどこか違っている強い意志を含んだ瞳は、黒髪の少年を捉えて放さない。
決して、放さない。
「「生きたまま連れて帰るなら、今しかない」」
異口同音。
あまりにも息の合った様は、彼らの目的がピッタリと合致していることを表していた。あまりにもそれに無我夢中であることを示していた。
仮にメルトを手中に収めたとして、その後のジャコバンやゼイヘンの追及からどう逃げ切るかなど、彼らの脳みそはこれっぽっちも考えてなどいない。
計画性の欠如? 違う。
彼らはいつだって、現在(いま)を生き抜くので精一杯だからだ。
「上等だァッ」
メルトの両腕が炎に包まれる。全快時よりは弱々しいそれも、まだ豪快に燃え盛っていた。
今にも暴れだしそうな面持ちの少年。そんな彼の肩に、手が置かれる。
「ちょっと、勝手にやる気にならないでよ」
メルトが後ろを見ると、フィリアンネをはじめに、スフィアとシーナも立ち上がっていた。
「あたし達も、戦うんでしょ?」
少し勝ち気な少女の手は、震えていた。
「……ああ、やるぞ」
ただメルトは短く、そう答えた。
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