九章 偽りの親兄弟

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「はァ? 何が閉じ込めただァ、チビがァ。こんな壁、俺がぶっ壊してやるッつぅんだよォッ!」  ジャコバンの咆哮は実に威勢よいものであったが、フレッドルだけでなくゼイヘンさえも呆れたような表情を作る。 「無理だなァ、ジャコバン。お前にはこの壁は壊せねェ」 「んだとォッ!?」 「一撃や二撃で壊せるくらいならよォ、あのチビもこんなん造んねぇだろォ」 「チビチビうっせぇぞコラ」  フレッドルの恫喝を背景に、ゼイヘンは軽やかな足取りで壁ぎわまで移動する。  拳で岩の塊を何度か叩くと、彼は納得したように頷いた。 「魔力の密度が濃いからなァ。予想通りかなり頑丈だぞォ」  ゼイヘンにとっては魔法によって生み出された魔力の塊でしかない岩の壁は、ゆえに眼で実物を見るよりもその強固さが理解できる。盲目であるから、魔力を感知する能力に長けてしまっているのだ。  もっとも、ゼイヘンの中では世界がどのように広がっているかなど、今は関係ない。  重要なのは、この壁が壊せるか否かということだ。 「壊せねぇことはないかもしれんがよォ、残念だがその時には、お前の魔力は空っぽ同然になってるだろうなァ」  そしてもう一つ、とゼイヘンはジャコバンからフレッドルへと言葉の対象を変える。 「そんな暇はくれるのかねェ。おチビさんよォ?」 「そうだなぁ、もう生きたままここを出す気も失せちまった」  心底恨めしそうにジャコバンとゼイヘンを眺め、フレッドルは吐き捨てた。  彼もまた視界が暗いがために、魔力感知により他の二人の位置を把握している。身体中を流れる魔力だけでもわかる二人の体格は、あきらかに成人男性の平均身長を越えていた。 「はなっから簡単に脱け出させる気はねぇだろォ? メルトなんかと関わる奴が、そんな甘い人間のはずがねェ」  笑いながら言ったゼイヘンに、フレッドルは身長に関する嫉妬心を抱いたまま言葉を返す。 「そりゃぁ違いねぇ。あいつの相手は普通の奴には勤まらねぇ」 「クハハッ、意見が合うじゃねぇかァ」 「イヤなくらいにな」
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