九章 偽りの親兄弟

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 太陽が降ってきたかのような強い閃光が箱の内部を埋め尽くす。  思わず目をつむり、それが魔法による爆発から生まれた物と、気付く時には遅かった。 「消えろォォォッ!!」  怒りに身を任せたジャコバンはゼイヘンの存在すら気にかけることなく、容赦ない爆撃を繰り出す。  豪快な爆発音が反響し耳をつんざく。  容赦ない爆風が吹きすさび全身を襲う。  中に引き込まれていた家屋が砕け、バラけた煉瓦が飛び回る。  外では太陽が明るく照っているというのに、この中だけはまるで地獄絵図。  相変わらず真っ暗な空間に小型の台風でも上陸したかのごとく、辺りにある物が重力を無視して飛散する。  もしもここが都市部の一角だとしたら、間違いなく数え切れない死者が出ていたであろう悲惨さ。  そんな現状を生み出したのが、たった一人の青年なのだ。  魔法の扱いを間違えば、どれほど恐ろしい事態に陥ることか。 「ハハッ……アハハハハァッ!」  爆風は止み、充満した煙を振り払うように笑い声が響く。 「死んだかッ? 死んだかよォッ、オイィッ!? 死んだら答えられねェかァ、アァッ!?」  狂ったように繰り返される『死』という一文字。  異常な世界に異常な言葉が異常なまでにぶちまけられる。  腹の底から湧き上がるどす黒い感情が、ジャコバンの喉を通って姿を現す。  シルバが抱いていた『崩国者』のイメージは、きっと彼にならピッタリ合致したことだろう。 「盛り上がってるとこ悪いが、死んでないからな、オイ」  しかし場違いなほど冷静な声が放たれ、次にはジャコバンよりも愉快そうな笑い。 「死んでねェんだなァ? テメェだけ死体に変わり果ててるのを期待してたんだがよォ!」 「期待を裏切って嬉しい限りだ」
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