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煙が消えていくにつれて、お互いの魔力を感じやすくなる。
腹立たしいチビ野郎の生命に異常がないことが、ジャコバンにはムカついてならなかった。
「クソがァッ、おとなしく死んでろッつゥんだよォッ!」
もはや暴言しか吐き出していないジャコバンにも、フレッドルは落ち着いた声色を保ってみせる。
「曲がりなりにも死線は越えてきてるつもりだからな。簡単に死ねねぇ理由も人並みにはあるさ」
フレッドルは気を緩めぬまま辺りを見渡す。
「まあ正直、咄嗟に閉じこもらなきゃまずかったがな。壁もここまで壊されるとは思ってなかったぜ?」
岩の壁にはヒビができた箇所がいくつかあり、なかには穴が開いて陽光が射し込んでいる部分もある。爆発の直前で、自分の周りに造りだした岩の壁も粉々になって転がっている。
ほんの少しだけ計算違いが存在したようだ。
とはいえ、無事でいるのだから問題はない。どれだけのミスを犯そうと、どれだけのアクシデントが起ころうと、生き残りさえすれば勝負には勝つ。
思ってもみなかった爆発の威力に臆するでもなく、フレッドルは壁の修復を行う。
まるで粘土でも引き伸ばすように岩石の貫通した穴を塞ぎ、刻まれたヒビも埋める。
多少なりとも魔力を消費してしまったが、致し方ない。是が非でも崩国者二名を外に出すわけにはいかないのだ。同時に時間稼ぎもしなければならない。
ギルドからの援軍は、予定通りならばじきにやってくる。自分が二人を仕留められずとも、応援さえあれば勝率はグンと引きあがる。
なによりも、メルトを殺させるわけにはいかない。
たとえ〝命を賭してでも〟。
「ハッ」
鼻を摘まれてもわからないような暗闇の中、思わずフレッドルは声を漏らす。
生き残れば勝ちだというのに、その勝ちを捨ててまで息子を死なせたくない自分がいる。
それが我ながら面白い。
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