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入学式
「「………」」
(き、気まずッ!)
楓は涙ぐみながら空をあおいで、ちょっと前の記憶をさかのぼっていた。
「あ゙ー!もう早くしてよ!遅刻したらどうすんの!?」
「うるさいわねー」
「~ッうるさいって!!」
玄関では楓が地団駄を踏みながらブツブツ愚痴をこぼす。
ここは山中家の玄関だ。
今日は楓の高校の入学式。
定期を持ちたい!
電車通学したい!
高校に入学したことにより、楓のこれらの夢はいっぺんに叶った。
そんな彼女は、今すぐにでも目の前にある扉を開けて飛び出したい衝動に駆けられていた。
だが、それをマイペースに支度をしている母親に阻止されている。
「だから言ったじゃんよ。早くしないと間に合わないってさー・・・・・」
ブカブカなローファーを、カポカポ言わせながら楓は駅のホームで口をとがらせた。
そう、結局楓達は乗るはずだった電車に間に合なかったのだ。
予定よりも5本は遅い電車を、母親と微妙な距離をあけて待っていた。
「・・・・・」
自業自得であれ、実の娘にボロクソ言われたのが悔しかったのだろう。
お母さんは黙り効かせた。
(あ、拗ねた…)
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