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そんな楓の頬を撫で上げるように風が吹いて
ふと顔を上げると
説明会の時も
うっとおしいと思っていた
10メートルほどの
上り坂が広がっていた。
その脇道には
だいぶ着なれた制服に身を包んだ先輩らしき人達が
並んでいる。
どうやら部活の勧誘らしい。
「バスケ部でーす」
「あ、ハンド部どう!?」
「サッカー部のマネやらない!?」
楓は、よどみなく来る様々な勧誘を
律儀に会釈しながら
登り坂を進んでいく。
後ろを振り向くと
お母さんが不機嫌そうな
顔をしながら
坂道を登っていた。
(他人のふりしよっと…)
そう心に誓って
またぎこちなく顔を前に向けて
「あっ」
小さく声を上げた。
「卓球部でーす!」
そう、楓は
卓球部に入ろうと
決めていたのだ。
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