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「誰だ?!」
セナが勢いよく叫ぶと、草むらが動き影が跳ぶ。僕らを飛び越えて、そのまま逃げる。
あっけに取られている僕達より速く、セナがそいつを追い始めた。
「逃がすか…!」
「待て、セナッ! チッ…聞く耳持たずか…!」
僕の制止も聞かず、すぐに姿を消してしまった。
「私達の会話…誰かに聞かれたのでしょうか…? そうだとしたら…」
「…嫌な予感がする。麗佳! ヘリを呼べ! 至急、二人を追うんだっ!」
「そうだと思って、手配済みよ。じきに来るわ」
さすが手早い。…間に合えば、良いが…
「もしかしたら、例の偽者かもしれんぞ。あいつらは、俺達になりきろうとして情報を欲している。今の会話…まずいぞ」
「…麗佳さんの偽者が出てくるかも…それで、ますます評判が悪くなって…終いには…」
偽者に成り代わって、本物が『退学』…全ては計画通りに事は進む。
ヘリの音がマンションに響く。今は…ともかく。
「そうならない為にも、セナを追う。アイツはまた…一人で抱え込もうとしている!」
「あたしとの約束…守らないのかな…違う、分かっている。だからこそ…(自分で抱え込もうとしている…)」
英雄は…一人じゃない。だから、割り勘でそれを請け負うのだ。前の僕だったら、考え付かなかった事だ…
完璧…計画…偽物…事件…か。
「ヘリが到着したわ! 速く向かうわよ! ほら、ぐずくずしない!」
「言われなくたって、分かってる! あの馬鹿を止めに行くぞ!」
…また繰り返される事を祈るしかない。僕は少し遅めに、ヘリへ向かった。
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