34人が本棚に入れています
本棚に追加
一人で突っ走る、平凡な僕。そして彼は…乱暴な僕。
「くっ…はぁ…はぁ…待て、偽者!」
「待てと言われて、待つ馬鹿は誰だ? お前じゃあるまいしな!」
あの中でもっとも共通点を持つ、僕と彼。普通のせいだろうか、全く見分けがつかない。
しかも…住宅街をグルグル回っているだけでは、勝てない。偽者は僕より、少し速いからだ。
「ま…まずい…息が…げほっ…!」
「だらしねぇな…それでも、二回の事件を解決した、英雄さんかよ? 俺にでもなれるな!」
偽者と距離が離れていく…もとい、まだ諦めている訳ではない。
「君に何が分かる…二回の事件…それに一回目は、決して在ってはならない事件なんだよ! そいつを…侮辱するな!」
キュウゥ…バシュ!
ローラースケーターを装備し、一気に詰める。幸い、傍に持っていてよかった。
「へぇ…英雄の名は立てじゃないのか…なるほど。なら、俺も黙っていられない」
角に差し掛かり、偽者がそれに沿って移動…僕も角を曲がる。
「…あれ? いない…?」
ブレーキをかけ、回りを見渡す。正面には誰もいない。小癪…どこに行った?
「何をちんたら、してるんだ?!」
ピンッ…ガラガラ…!
「なっ…!」
ストッパーを外され、工事現場の鉄棒が僕を襲う。すぐにエンジンを吹かし、商店街に出る。
後ろにはただ、散乱した鉄棒のみが存在していた。
「チッ…惜しい! 本物と成り変われば、色々と都合がいいとヤツが言ってたのにな…」
空を飛んでいる偽者は、僕の前で滑空する。蛇のようにフラフラとしていて、危なっかしい。
「ヤツ…? 君は誰かに依頼されて、欺こうとしているのか?」
「さぁ…どうだろう…なっ!」
ボトボト…!
大きなバスケットを引っくり返し、進路を妨害する。あいにく、避けられる程度だった。
「甘い…! このくらい…!」
ジャンプをして、空中に浮かぶと…
「どっちがだ? 英雄さんよ!」
バキッ…!
最初のコメントを投稿しよう!