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「そこまでだっ! セナを離せ!」
聞き慣れた声がする。もうろうとした意識の中で、必死に主を思い出す。
「まも…る…?」
「何だ、お前は?」
大工は不機嫌そうな顔をみんなに向けるが、依然として僕を離したりはしない。
「CIA幹部…及び、警察権限を持っている雷轟 鎮という」
「同じく、CIA情報員の坂名春美です! セナ君を離してください!」
みんなの声がする…声にすることはできないけど、涙が自然に出る。
「警察権限? それはちょうどいい! この偽英雄を逮捕してくれ! みんな、コイツに迷惑を被っているんだ!」
さっきと同じように、みんなに突き出される。凛香の声が響く。
「ちょっと! 怪我をしているのに、そんな扱いは酷いじゃない! ロープで縛り付けられて…宙吊りにされて!」
「俺の親友を痛め付けるなんて…覚悟はできてるんだろうな?!」
「ぐっ…確かに、怪我をしているようだが…しかし!」
静かに地面へ降ろすと、大工は反抗する。
「怪我をしていようか、犯罪は犯罪! 逮捕して、清々させてくれ!」
「そんな…皆さん…セナさんじゃないです…! 偽者を…誰か見ていませんか…?!」
大樹はそう訴える。だが、全員横を振りセナを指差すだけだった。
「う……がはっ…」
バタッ…
「セナッ! 貴様ら…偽者はいたのだ! 何故、それが分からない?!」
「あぁ、分からないね! さっきから、お前らは何を言っている? 居もしない偽者だとかを、犯人だとか言うのか? 馬鹿馬鹿しい!」
あくまで、セナを渡す気はない…と。なるほど、ならこちらも考えがある。
「…強行手段に至らせてもらう。春美っ!」
「皆さん、ごめんなさい! えいっ! (これも、セナ君の為…!)」
春美がフラッシュグレネードを投げ、将希が走る。
「なぬ…っ」
バシュ! ピカッー!
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