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『関谷総合病院・病室』
「酷い…酷すぎるよ…キョウちゃんが…何をしたって言うの…? ねぇ…」
「そうだよ…こんなにボロボロにされて…それでも一人で抱え込んで……うわぁんー!」
ベッドにうずくまり、二人は泣き叫ぶ。無力にも、見ている事しかできない。
医者の話だと、命には関わらないが…三日ほど安静が必要らしい。今は薬で眠っているが…
「兄貴…私…何もできなかった…」
「僕も…ただ見てて、見過ごしただけ…」
「責めるな…自分を。俺だって…泣きたいさ。何、コイツが死んだ訳じゃないんだから…」
それでも、胸が締め付けられる。何もしてやれなかった、ふがいなさに何となく苛立ちを覚えていた。
もう何度目だ…? この、無力感を味わったのは…二、三回じゃすまないだろうな…
「あの時…引き留めてやれば…くそっ! 理事長が…!」
「………っ」
全ては…あのカレンとか言う、理事長のせいだ。いくら、俺達を失脚させたいとはいえ…命まで脅かす事をするなんて…!
「…みんな。いつまでも、悔いている場合じゃない。今日は、頭をゆっくり冷やして、また明日の放課後…来よう。今日は解散…」
「私は…まだここにいます!」
「あたしは…まだここにいるよ!」
春美ちゃんと凛香ちゃんは、解散を拒むようにセナのベッドから、かたくなに離れようとはしない。
「私も…この馬鹿をせめて…登校時間まで…いさせてくれない…?」
「麗佳まで…でも、学校があるし…」
「………居させてやれ。せめて、登校時間までは。俺も…頭を冷やしたい…」
将希は鎮と共に、病室を出ていく。大樹も袖を掴んで、行こうと仕草をする。ったく…
「…早目に寝ろよ。カレンを…セナの為にも、追い詰めないといけないんだからな…」
『………うん』
三人が縦に首を振ったのを確認した後、俺は大樹を連れて二人を追った。
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