出逢いは突然のハプニング

18/20
前へ
/25ページ
次へ
    頭で理屈を並べ立て、さくらは、ときめきと苦しみという相反する二つの感情を正当化した。  "怪しい殿方の声は、怖かったけれど……勇気を出して、来て良かったわ"  そこまで思考を巡らせた時、幾分遅れて、さくらは億劫な長い階段を駆け上がってきた本来の動機を思い出した。  「そうだわ先輩!さっき騒いでいた人はどうなりましたの?」  「……生徒会書記の、真淵(まぶち)君のこと?ちょっと倒れちゃったみたい。保健室の先生に連絡しよっか」  一瞬、このはの目が泳いだ気がした。  それはさくらの気の所為だろうか?  さくらが金髪のツインテールの妖精の視線を目で追うと、モヒカン頭の少年が仰向けになって倒れていた。  "気を失ってしまわれたのかしら……?それに、真淵さん?の側に転がっているのって、角材?"  真淵と呼ばれた少年の側は、木片やら紙の筒やら、訳の分からないがらくたで散らかっていた。  争った形跡と思えるが、このはと真淵とさくら以外、辺りには誰も見当たらない。  一体何がどうなって、真淵が倒れ、周囲がここまで荒れたのだろう。  真淵の右目付近に浮かんだ青痣がいかにして出来たのかも、さくらには気になるところだ。  そもそも、さっきの怒号のだみ声と言い、真淵は外見まで典型的な不良だ。お世辞にも生徒会役員らしくない。  腑に落ちないことだらけだ。  頭を悩ませるさくらに引き替え、このははこれでもかと言わんばかりにマイペースだ。  彼女は、懐から出した携帯電話を耳に当てて、真淵のために保健医を呼び出していた。  「彼、生徒会なんですの……」  電話を終えたこのはは、さくらの疑問に頷いてくれた。  「そんな風には見えないよね。西麹は生徒会の書記や会計なんて、裏方みたいに目立たない。中等部にいた美咲さんが信じられなくても仕方ないよ。私から見ても真淵君って、ちょっと悪戯っ子なガキ大将にしか見えないもん。美咲さんの方がずっと目立ってる」  「え、それって……喜んで良いものではありませんわよね……」  「ううん、キラキラしてるってことだよ。演劇部にも多いもん、貴女のファン」  「まさか」
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加