プロローグ

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  プルルッ、プルルッ、 太陽もまだ昇りきってない時間に携帯の着信を知らせるブザー音が一際六畳間に鳴り響いた。 それによって半ば強制的に起こされた為に不愉快な気分になり、このまま無視してやろうかと思った。 しかし、こんな朝早い時間にかけてくる相手が気になり、布団から手だけ出して携帯を開いて確認する。 重い瞼を持ち上げてディスプレイを覗くと見覚えのある名前が表示されている。 それもお世話になっている妖怪だ。 「……桔梗か、どうした?」 『その方、大学生じゃが進路決まってないじゃろう?』 片方の耳にあてると、若干こもった声で返ってきた。 また誰も知らないような、よく分からない場所から電話しているのだろう。 「……あぁ」 『しがら教育実習生に推薦しといたぞ』 突然の言葉に頭の中で反復して、やっとこさ要領を得る。 「……何故そうなった?」 ツー…ツー… しかし、あちらは既に用が済んだのか切られていた。 人の話を聞く気が毛頭ない上、押し付けるだけ押し付けてきた。 「意味が分からん」 こんな早朝にそれを告げる為だけに電話してきたのかと思うと怒るのを通り越して呆れ、切られた携帯の方を見やる。 桔梗の真意が理解出来ないが、学園に向かえばきっと会えるだろう。 眠い。頭が働かない。取り敢えず考えるのは二度寝してからだ。 二度と掛かってこないように電源を切って携帯を放り投げる。 ガッ――と何かにぶつかる音がしたがそれを見る気力すら湧かず、布団に潜り込んだ。  
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