-第2話-

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杏「……キスしたら大人なの?」 微かに滲むのは敵意だろうか、苛立ちだろうか。 ただ、何れも矛が向くのは俺ではないのか…… 杏「キスする事が大人だって言うなら……」 それは、静かに紡がれる言葉の終りと、同時に―― ――甘い香りがした。 柔らかで、甘い香りが。 鼻腔に残る杏の香りと、唇に残る柔らかな感触。 ほんの一瞬なのか、それとも数秒なのかはもう解らない。 ただ気が付くと、横顔はなく、眼前一杯にある杏の顔。 痺れた頭は、ただもう一度、触れたがる。 夏の喧騒は耳に届いていないのか、ただ静かに。 互いの鼓動だけを耳にして、二度三度と触れるだけの口付けを交わし―― ――無言のまま、暮れ泥む街を歩く。
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