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多分、夕方の朱に染まっていなければ、俺の顔色が杏に見えてしまうだろう。
杏も、顔を伏せたままこちらを見ようとしないのは、恐らく同じ。
……やべぇ……意識しちまった……
隣を歩く杏から、わずかに鼻腔をくすぐる香りが漂い着く。
伴う記憶も、今なお鮮明に。
……柔らかかった……な、良い匂いもしたし……
痺れは、取れていないのだろう。
……もう一度……
突き上げる衝動。
……杏……
杏「……っ……」
欲に任せた身体は杏の手を握り、向けられたその瞳を見つめる。
……解ってる、これは……
……これは、欲に溺れてるだけだ……
『想い』何て無いのかもしれない……ただ、あの快楽にも似た感情に溺れたい……
……杏……なぁ……杏――
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