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「娘さんを僕にください!」
一人の細身の男が畳みに手を着き声を張り上げる。
「お願いします!」
男は毎晩も、ここに通いつめていた。
今日で実に、三十日目だ。
この男がこんなにも通い続けるのは……、もちろん、良い返事が貰えないからだ。
いつも、追い返されてしまう。
今回のように……。
「聞く耳持たん! さっさと帰れ!」
この声の主は、鬼の様な形相をしている。
その声に細身の男は一瞬ビックっとしたが、直ぐに目の前に座っている体の大きい男の目を見る。
体の大きい男は、もう細身の男の事を見てもいない。
「今日のところは帰ります」
細身の男は立ち上がり、そのまま立ち去った。
その後を、一人の女性が追い家を出た。
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