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「待って……」
うしろからの声に男は立ち止まっり振り返り、目を見開きました。
「どうしたんだ!」
女性は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「だって……」
女性は細身の男のシャツの袖口を掴んだ。
それはとても弱い、それでも、しっかりとしたものだった。
男はその手に自分の手を重ねるながら、静かに言った。
「どうしたの?」
「お父さんが私たちの結婚を認めてくれないから……私、不安で……」
言葉の最後は、涙でくもった。
男は指で女性の涙を優しく拭き取る。
「大丈夫、絶対に認めてもらうから」
女性の耳元で力強く呟いた。
「……うん」
女性は小さく頷いた。
「絶対に。絶対にさ、結婚して幸せになろうな」
「……うん」
「辛い気持ちになんかさせない、いつも二人で笑ってよ」
「……うん」
「もう俺、行くから」
男は手の中にある、自分より小さい手を離した。
「じゃあ、また明日。お父さんに追い返されに行くよ」
そうして、男は笑顔を見せた。
「ふふふ」
男の笑顔を見て女性は少し笑った。
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