~君への道のり~

4/5
前へ
/10ページ
次へ
「アナタ…」 「ん?」 男は後ろからの声に振り返りもしないで、生半可な返事をする。 「そろそろ、二人の結婚認めてもいいんじゃない?」 男がこっちを見ないため、女性は男の正面に座った。 「そのことか…」 男は腕を組、眉間に皺を寄せる。 「あの人が嫌なの? 「嫌じゃない、ただ…」 「ただ?」 「心配なんだ、本当にあいつらがやっていけるか」 「大丈夫よ」 「しかしな…」 男は、深く唸りを上げた。 「ふふふ」 女性は小さく笑った。 「どうした?」 「いいえ、ただ可笑しくて……ふふ」 女性はそう言って、また小さく笑った。 「なんだ?」 「あのね…」 そうして、女性は静かに言った。 「私のお父さんも、こんな感じだったのかなって」 男はばつの悪そうに鼻の頭を掻く。 「あの時アナタは、何度も頭を下げてた。今のあの人の様に…」 女性は昔を思い出す様に遠くを見た。 「そうだったな」 男も同じ様に遠くを見る。 「ねぇ、覚えてる?アナタがお父さんに何度も追い返されたて、不安になった私に言ったこと」 「……」 男は恥ずかしそうに、目を逸らした。 「大丈夫、絶対に結婚して幸せになろう……、今でも覚えてる」 女性は懐かしみ、優しく微笑んだ。 「ねぇ」 「……なんだ?」 男はまだ恥ずかしいのか、女性の顔を見ない。 「あの子たちなら大丈夫よ」 「……」 「絶対幸せになる。私たちがそうだったように」 「そうだな…」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加