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「アナタ…」
「ん?」
男は後ろからの声に振り返りもしないで、生半可な返事をする。
「そろそろ、二人の結婚認めてもいいんじゃない?」
男がこっちを見ないため、女性は男の正面に座った。
「そのことか…」
男は腕を組、眉間に皺を寄せる。
「あの人が嫌なの?
「嫌じゃない、ただ…」
「ただ?」
「心配なんだ、本当にあいつらがやっていけるか」
「大丈夫よ」
「しかしな…」
男は、深く唸りを上げた。
「ふふふ」
女性は小さく笑った。
「どうした?」
「いいえ、ただ可笑しくて……ふふ」
女性はそう言って、また小さく笑った。
「なんだ?」
「あのね…」
そうして、女性は静かに言った。
「私のお父さんも、こんな感じだったのかなって」
男はばつの悪そうに鼻の頭を掻く。
「あの時アナタは、何度も頭を下げてた。今のあの人の様に…」
女性は昔を思い出す様に遠くを見た。
「そうだったな」
男も同じ様に遠くを見る。
「ねぇ、覚えてる?アナタがお父さんに何度も追い返されたて、不安になった私に言ったこと」
「……」
男は恥ずかしそうに、目を逸らした。
「大丈夫、絶対に結婚して幸せになろう……、今でも覚えてる」
女性は懐かしみ、優しく微笑んだ。
「ねぇ」
「……なんだ?」
男はまだ恥ずかしいのか、女性の顔を見ない。
「あの子たちなら大丈夫よ」
「……」
「絶対幸せになる。私たちがそうだったように」
「そうだな…」
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