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大臣の髭が少し下がった。仕え甲斐のない上司ですまない。謝罪を込めてヤモリを一匹水槽から摘み出した。
「ふむ。今日の報告はもういいぞ。進捗に問題ないようだから、ほら、今日の三つ時に食べるといい」
そろりとヤモリを掌に載せて差し出すと、大臣の目の色が変わった。やはり好物を常に携えておくと対応が楽でいい。
踊るように退出する大臣を見送ると違う水槽から慎重に蜜金魚を一匹摘んだ。とても甘く美味だが、よく腹に蜜の貯まったものでないと、頭の苦みの方が勝るのだ。
「計画というものは多少杜撰な方が忙しくていいのかもしれんな」
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