プロローグ

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 暖かな太陽の光が降りそそぐ。心地好い風が吹き抜けてゆく。そんな、とても穏やかな朝。俺は緩やかな歩調で、この環境を楽しみながら歩いていた。  呼吸をするたびに、午前特有の爽やかな香りのする空気が肺へと送られる。  平日のこの時間。本来ならば俺のような学生は、学校という名の狭苦しい施設に詰め込まれているはずなのだが、今日は違う。今日は5月の大型連休。つまりはゴールデンウィークなのだ。  そのため、解放された学生達が街の色々な場所で友人や恋人と楽しそうに遊んでいる。……まあ、残念ながら俺は1人なのだが。  それなら今は友人に会いに行く途中なのかと聞かれたら、それは違うと答えよう。俺はただ、買い物をするために近所のスーパーへ向かっているだけだった。  言い訳をするみたいになってしまうが、遊ぶ相手が居ないほど友達が少ないわけではない。ちょっとした事情から一人暮らしをしているため、こういう連休には普段出来ないような家事をやっておきたいのだ。  それに、俺は1人が嫌いじゃない。  もちろん友達と一緒に遊べば楽しいと感じるし、多人数でいるのも好きだ。  それでも、周りに振り回されることなく、1人でゆっくりと過ごす時間が俺は好きなのだ。  何と言っても、一人だからこそ感じられる新しい発見が面白い。  友達とワイワイ話している時には気にする程の事でなくても、1人で居る時にゆっくりと眺めると、何かに気が付く事がある。  例えば……そう、木はどうだろう。  普通、友達と木を眺める事などないだろう。木があったとしても、同じように生えているだけにしか感じない。少し何かを思っても「大きい木だなぁ」程度だろう。  そんな木だが、改めて見てみると、それぞれが全然違った形をしていて、優しさや力強さを感じる事が出来る。  あ、でも、木だと少し老人っぽいよなぁ……。それなら、雲の形なんてどうだろう。  多くの人が、小さい頃には「わぁ! ソフトクリームみたいな形の雲だぁ!」なんて言った記憶があるのではないだろうか。  少なくとも幼稚園児くらいだった時の俺はそうだった。  こうやって、ふと空を見上げると、いつも違った形の雲が―― 「…………は?」  空を見上げた状態で、俺は固まった。
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