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「布団とかはどうするんだ? 1人分しかないぞ?」
「ん、それなら大丈夫」
ミカが俺の部屋を指さしながら言う。
どういう事だ? 俺の部屋には俺のベッドがあるだけで、他には布団などの寝具は仕舞ってないし……。
とりあえず見れば分かるだろう、と考えた俺は自室へと向かい、ドアを開けた。
「……おい」
「ん?」
自室を確認して一瞬、唖然としてしまった。あまりにも変化が大きい。
続いて状況を理解すると、怒りの感情が込み上げてくる。
俺の部屋から有るはずの物が無くなり、無いはずの物が増えている。
「……俺の勉強机は何処に消えた」
「んー。サトルのお母さんが捨てちゃったよ」
俺の部屋から、俺の勉強机が綺麗に姿を消してしまっていた。小学校1年生の時から愛用し続けた勉強の友との別れだった。
まさか、学生である息子から勉強机を取り上げるとは……。
予想外の行動に頭が痛くなった。
親というのは本来、勉強をやるように促進こそしても、勉強の邪魔なんてしないのが普通だろう。あの親は学校の勉強に必要性なんて感じていないみたいだったが、ここまで大きく出てくるとは思いもしなかった。
これで俺は明日から、自室で勉強が出来なくなってしまった。しばらくはダイニングのテーブルを代用するしかないだろう。
机というこれだけ大きな物が無くなって「あぁ、そうなんだ」で、納得できるわけがない。言いたい文句は沢山ある。
しかし、だ。無くなってしまった物は仕方ない事にしよう。仕方ないとは思えないが、今はいい。
「……この新しいベッドは、どうした」
無くなった物以上に、新しく増えた物が問題だった。
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