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俺は昔から、漫画やアニメのような物語が大好きで、幼い頃にはその主人公に憧れているような少年だった。
ここに今居る俺は、実は全然本当の自分と違っていて、何かのきっかけで不思議な力を手に入れて世界を救うために戦う。なんて展開を本気で望んだ時期さえあった。
別に特別な事ではないだろう? 改めて確認なんてとらなくても、みんな何かに憧れを抱いていたはずだ。
とりあえず俺、山本覚(ヤマモト サトル)という少年は、格好良く人を救う『力』に憧れていたという、それだけの話だ。
本心を言ってしまえば、そんな力があるなら高校三年生になった今でも欲しい。
多分、俺は昔から力が欲しかったんだと思う。大切なモノを失わずに済むだけの力が。
実際にそんな力が俺の中にあると思うかと聞かれれば、そんなモノは無いと答えられるくらいには諦めている。
でも、せめて、あの主人公達のように、人の痛みを共有してあげられるような心の力が欲しかったんだ。
それさえ有れば、きっと香織は……。
…………。
さて、こんな主人公に憧れていた少年の俺だが、どうやら気を失っていたらしい。
この体の感覚からして多分、意識不明の重体という状態だったのだろう。
さっき意識が戻ったばかりだが、一言感想を言うとしたら。
痛ッぇぇぇえええええええっ!
全身打撲で体中に違和感があるし、まともに痛いという感覚だと分かるのも左手くらいだ。
内臓にも何とも説明しづらい違和感がある。臓器損傷というものを俺は経験してしまったのだろうか。
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