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長椅子から立ち上がると同時に、傍らの薔薇を一輪摘み取る。
頬を撫でるように、流れる金の髪に赤い花弁を挿した。
「……クラウス……」
目を細めてからそのままヴィクトリアの掌を取り、膝を着く。
「レディ、ヴィクトリアお会いしたかった……君の手を煩わせてしまった、すまない」
その手の甲に優しくキスを落とせば。
「ッよ、よろしくてよ///////」
先程迄の勢いは何処へ掻き消えたのか。
赤面し俯くヴィクトリアを前にホッと胸を撫で下ろす。
漸く、静かになった。
――そうやって黙っていれば愛らしいのに。
ヴィクトリアに気付かれないように小さく嘆息すれば。
足元で何かが煌めいた。
これは……?
「クラウス?」
「いや、行こう……」
つまみ上げたのは小さな紅い石のピアス。
――この家で紅い石を身につける人間は一人しか居ない……
ピアスの持ち主に想いを馳せれば、いつの間にかヴィクトリアが左手に絡み付くように寄り添ってくる。
ヴィクトリアに見付からないように、ピアスを上着の内ポケットに仕舞い込むと。
されるがままに、ヴィクトリアをエスコートしながら阿舎を後にした。
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