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エルザ・ゴッドフリード。
1つ年下の僕の妹。
金髪碧眼のゴッドフリード一族に在って唯一、その特色を失った者。
白雪を思わせる色の無い髪に血潮のような鮮烈な瞳は、正に異端の証でありながらその美しさは例えようのない無垢な輝きを放ち、エルザの排斥を口にする並み居る親族を一目で黙らせる程であった……
「……エルザ……?」
あまりに悲しげな色を称えた赤い瞳に、思わず声をかければ。
――憂いを含んだままの優しい微笑みが返ってくる。
心配するな、というその健気な姿に僕はまた何も言えなくなるのだ。
急に大人びたエルザの様子に、顔を赤らめてしまった事が恥ずかしくて俯いてしまう……
その時、カチャリとナイフがプレートに収められた。
「……兄様、おやすみなさい」
「あ……」
気付けば食事を終えたエルザは席を立ち、従僕を従えて食堂の出口へと歩を進めていく。
「……おやすみ、エルザ」
【ばたん】
この僕の小さな返事はエルザの耳に届いたのだろうか……?
耳に残るドアの音が、まるで二人の世界を分かつような警笛のように響く。
どうして僕はこんなにも不安を感じているのだろう……
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