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「お前は王女を救うことができると思っている。だが、それは目先の問題を解決するだけに過ぎない…。真の意味で王女を救うことができるのは俺だけさ」
「なにを言ってるんだ…?」
「時として、最善の方法が最良の結果になるとは限らない」
声を聞くだけで安心する
でも
違う
僕が聞きたいのはそんな言葉じゃない
「お前は王女を救うことができない。それを覚えておくんだ」
「君はいったい何をしようとしているんだ?…いったい…何を…」
僕が聞きたいのは
「ゴーダ卿もダイスダーグ卿も、お前の兄キたちも、ひとつの大きな流れに気づいていない…そう、気づいていないんだ」
そんな言葉じゃない
「俺はその流れに逆らっているだけ。それだけさ」
展望塔に停まっていた鳥たちがバサバサと合図を聞いたように飛び出す。半端に口を開けて二人は鳥を見上げた
鳥たちから何か読み取ったのかどうかはわからないが、ディリータはラムザから顔を背ける
「生きていたらまた会おう」
生きていたら。
その言葉にラムザは、自分が、なのか、それともディリータが、なのか…不安を感じた
ラムザは言葉を返せないでいる
久しい再会。数分間での会話、やりとり
長い別れ、会えない時間
確かに自分が選択した道だ
でも、彼といられないのは……
俯いていると、すでにこの場を去ったと思っていたディリータが、ラムザをスッと横切った
「死ぬなよ」
横切られた際に耳元で伝えられた一言
我慢ができなくなってラムザはディリータに振り向いた
「僕が聞きたいのはそんな言葉じゃ──」
口を開いた途端に涙が溢れそうだった
しかし、開いた口はディリータの口によって塞がれた
時が止まったような感覚
ディリータの暖かい感覚が口から伝わる
「…これでいいだろ?」
唇を離したディリータは意地悪く笑みをかけた
ラムザはもはや涙など止まっていた
彼の背中を見つめる
去っていく愛しい人
ラムザはその場に立ち竦める
『死ぬなよ』
その言葉を小さく復唱しながら…─
また会えることを信じた
*
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