『トイレのバナ子さん』

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俺、春川 貢(はるかわ みつぐ)。 この春めでたく大学へ入学した。 漸く学校生活に慣れはじめた頃、事件?は起こった。 「いやはや、モテモテ貢くぅんと同じガッコになれるなんてアタシ、し・あ・わ・せ。」 こいつは高校の同級生。 柊 紬(ひいらぎ つむぎ)。 クラスがバラバラで紬がここに進学した事知らなかったけど、たまたま講義が一緒になりこいつの存在を知った。 それ以来つきまとわれるようになった。 紬の言う事も間違いではない。 モデル並にスタイルがよく赤いメッシュの入った髪に、爽やかな顔。 俺はイケメンだ。 チャラ男じゃないから。 正当なイケメンだから。 「ウザイ。」 くねくねするなよなぁ……。 「そう言えばさぁ貢くぅん、このガッコ七不思議あるって知ってる?」 紬が流し目で俺を見る。 男に色目使われても嬉しくないワイ。 「あん? ガキじゃあるまいし、信じてんのか?」 学校の七不思議って定番だよな。 俺は作り話だと思うんだけどなぁ。 「だって、アタシも貢くぅんも美少年だから襲われたら困るでしょ? 『トイレのバナ子さん』に。」 紬はお姉口調だが、中々のルックスをしている。 背が高くやや筋肉質。 少し長めの黒髪がよく似合う。 目がくりくりしていてどちらかというと可愛い系だ。 いや、男に可愛いは失礼か。 ……紬の場合、お姉だから逆に喜びそうだな。 「『バナ子さん』? 『花子さん』じゃなくて?」 『バナ子』なんて初めて聞いた。 『トイレの花子さん』とか定番だもんな。 「何言ってるんのよ~。 『花子さん』はまずいって。 著作権やら版権やらさ~。 『バナ子さん』もギリよ。」 三回ほど体をくねらせ紬は言う。 いや、この際紬がくねった回数何てぶっちゃけどうでもいい。 「……そういう問題かよ。」 うん。 もうどうでもいいや。 バナ子さんも紬も。 好きなようにしてくだされ。
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