『トイレのバナ子さん』

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「何かバナ子さんは絶世の美女らしいよ。」 目をキラキラさせて紬は言う。 「お前、女に興味あるのか? 意外だな。」 フッ。 お姉でもやっぱ男だな。 きっと乳とか尻も好きなんだろうな。 「やっだぁ。 貢くぅんったらヤ・キ・モ・チ? アタシは可愛い子だったら男も女も好・き。 きゃっ。」 ……デレデレすんなよ。 そういう事か。 『ねぇ、これ超可愛くてやばいんだけど~』ってノリか。 何でもかんでも『可愛い』と言う……。 「お前な。 そういうのは優柔不断っていうんだよ。」 優柔不断も甚だしいぜ。 全く……。 「でも本命は貢くぅんだ・か・ら。」 語尾を区切るな。 語尾を。 コイツ……。 何処まで本気かわかんねぇ。 『本気』と書いて『マジ』と読むくらいわかんねぇ。 「はいはい。 とにかく、『トイレのバナ子さん』とか信憑性ない話すんなよ。 祟られるぞ。」 俺は飲み終えた牛乳パックをぐしゃりと握り潰し、立ち上がった。 「何処行くの?」 いきなり立ち上がった俺を紬は見つめる。 恋する乙女のような目で見つめるの、やめてくれ。 「トイレだよ。 トイレ。」 牛乳飲んだらなんかやばかった何て言えない……。 言ったらきっとえらいこっちゃになる。 「アタシも行く。」 紬も立ち上がった。 勘弁してください。 「やだ。」 断固、拒否。 「『やだ』って、『バナ子さん』に襲われたらどうするのよ!」 机をバンッと叩き、紬は声を張る。 ……よしてくれよ。 他の学生達がジロジロみてるじゃないか。 好奇の眼差しだよ、これは。 「いるわけねぇだろ。 お前と連れションする方が怖いわ。 じゃあの。」 熱くなってる紬を尻目に俺は離席する。 いや、早くここを離れたいんだよ。 「ひっどーい。」 ハンカチを徐に取り出し、紬はお得意のくねくねダンスをする。 「……だから、くねるなよ。」 くねる紬を放置し俺はさっさとトイレへと向かった。 紬よ、勝手にくねっててください。 むしろ、一生くねっててください。
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