4人が本棚に入れています
本棚に追加
「何かバナ子さんは絶世の美女らしいよ。」
目をキラキラさせて紬は言う。
「お前、女に興味あるのか?
意外だな。」
フッ。
お姉でもやっぱ男だな。
きっと乳とか尻も好きなんだろうな。
「やっだぁ。
貢くぅんったらヤ・キ・モ・チ?
アタシは可愛い子だったら男も女も好・き。
きゃっ。」
……デレデレすんなよ。
そういう事か。
『ねぇ、これ超可愛くてやばいんだけど~』ってノリか。
何でもかんでも『可愛い』と言う……。
「お前な。
そういうのは優柔不断っていうんだよ。」
優柔不断も甚だしいぜ。
全く……。
「でも本命は貢くぅんだ・か・ら。」
語尾を区切るな。
語尾を。
コイツ……。
何処まで本気かわかんねぇ。
『本気』と書いて『マジ』と読むくらいわかんねぇ。
「はいはい。
とにかく、『トイレのバナ子さん』とか信憑性ない話すんなよ。
祟られるぞ。」
俺は飲み終えた牛乳パックをぐしゃりと握り潰し、立ち上がった。
「何処行くの?」
いきなり立ち上がった俺を紬は見つめる。
恋する乙女のような目で見つめるの、やめてくれ。
「トイレだよ。
トイレ。」
牛乳飲んだらなんかやばかった何て言えない……。
言ったらきっとえらいこっちゃになる。
「アタシも行く。」
紬も立ち上がった。
勘弁してください。
「やだ。」
断固、拒否。
「『やだ』って、『バナ子さん』に襲われたらどうするのよ!」
机をバンッと叩き、紬は声を張る。
……よしてくれよ。
他の学生達がジロジロみてるじゃないか。
好奇の眼差しだよ、これは。
「いるわけねぇだろ。
お前と連れションする方が怖いわ。
じゃあの。」
熱くなってる紬を尻目に俺は離席する。
いや、早くここを離れたいんだよ。
「ひっどーい。」
ハンカチを徐に取り出し、紬はお得意のくねくねダンスをする。
「……だから、くねるなよ。」
くねる紬を放置し俺はさっさとトイレへと向かった。
紬よ、勝手にくねっててください。
むしろ、一生くねっててください。
最初のコメントを投稿しよう!