『トイレのバナ子さん』

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「……何かストレートにバンバン質問ぶつけて来るから気持ちいいわね。」 バナ子は無表情でいう。 だって疑問だらけだもん。 オブラートに包んで質問したとこで、気持ちがモヤモヤするくらいならストレートに聞いた方がいい。 「あぁ、わりぃ。」 とりあえず、平謝り。 「あたし、バナナで死んだの。」 バナナで死んだ? バナナ? う~ん……。 「まさかバナナの皮で転んだ……とか?」 まさか……ね。 と思いつつも質問する俺って……。 「おしい。 あたしお昼にね、バナナ食べてたら詰まって死んじゃったの。」 手をパチンと鳴らしバナ子はいう。 おしいのか……? バナ子は明るく言ってるけど、さりげなく悲しい話だな。 「そっか。」 俺は次の言葉を探した。 バナ子を笑うのも同情するの何となく嫌だ。 ……ってか、前者は無理。 笑えない話だし。 「あたし、昼休み終わったら好きな子に告白しようと思ってたんだ。 トイレに来た時、狙ってね。」 そう言うとバナ子はトイレの窓を見つめた。 窓からは外で話してる生徒やカップルが見えた。 バナ子の目にはこの光景どう映ってるんだろう……。 「成る程。 これでつじつまがあったよ。 バナ子さんがバナナ食べてる理由も、男子便所にでる理由も。」 俺的な解釈。 告白しようとしてたがバナナが詰まり他界。 無念の気持ちが残り、告白しようと思っていた男子便所に気持ちが強く地縛霊になった。 「もう10年も前の話よ。 でもあたしは地縛霊になってしまって成仏出来なくなったの。」 バナ子は悲しそうにする。 10年前っていったら携帯電話とかまだ普及してなかっただろうし、バナ子にとってはタイミングを見計らって告白するのは一世一代の事だったんだろうな。 「バナ子さん……。」 俺はバナ子を静かに呼んだ。 「菜々子。」 バナ子は呟くように言った。 「あ?」 菜々子? ……って、まさか。 「あたし、菜々子っていうの。」 やっぱり、本名か。 「バナナ子、バナ子、ナナコ。」 何となくぼける。 「……ボケなくていいから。」 普通に突っ込まれたし。
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