このままどこか遠くへ

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  「やってくれたな」  俺を呼び出したその人は、こちらを見る事なくそう言った  外は暗い  強く雨が窓を叩く 「申し訳ありません」  呼び出されるとは思っていたが、思った以上に早かった  一体、この方の情報網はどうなっているのか… 「どうすればいいか…分かってるな?」  重く、声が響く  無論。分かっている  が、  返事はしたくない  すれば実行せねばならない  それは避けたかった  しかし、  窓に映った顔が、見透かしたようにゆるりと笑うのを見て、無駄を悟った  でも、それ、だけは…… 「少々……お待ちください」 「早急に対処を」 「お待ちください」 「お前の事は俺が判断する。分かっているな?」 「ラキトス様!お願いします!お待ちください!」  言ってしまった後に  不味った!  と、思った  もう遅い  フン、と不機嫌に鼻を鳴らし、金の髪を揺らしながら、その方は静かにこちらを向いた  鋭い視線が俺を捕らえた瞬間、部屋の空気の重さが増す  これがあるから  この人は嫌だ  胸の内で毒づきながら、しばらく、痛い静寂に打つ雨の音を聞いていた  先に口を開いたのは、あちら 「待ってどうなる。実験は失敗だ。やはり、『心』は無用だった」 「しかし、」 「何の為にここに居ると思っている」 「……申し訳ありません」 「俺に意見するとは……偉くなったもんだな。仁(ジン)」 「……申し訳、ありません」
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